VOL.48 獣医の日記

動物への投薬がすんなり行かない場合、原因の一つに薬のにおいがあります。たとえば、シマウマの餌に薬を混ぜると、口をつける前ににおいで気づいて食べてくれないことは削蹄のたびに直面する悩みでもあります。 このたび、ヤギたちの耳や鼻にちょっとしたハゲが見つかりました。皮膚の感染症が考えられたので、軟膏を塗ることにしたのですが、これが結構においます。さわやかなハーブのような香りなのですが、ヤギがどう感じるかはわかりません。かくして、薬を塗り始めたところ、思いのほか当のヤギたちに好評であることがわかりました。ほかのヤギが薬を塗られているところや、私が握る薬のチューブに顔を摺り寄せたり、ずっとにおいをかぎ続けてフレーメン(フェロモンなどを嗅ぎ取った時に上唇をめくりあげて、よくにおいを感じようとする反応)をしたりと好感触です。においは好きでも、捕まえられるのは嫌なので、自分の番になると逃げ、ほかのヤギの番になると寄ってくる…といった妙な状況にもなってきます。 そんな中、ただ1頭ハゲができていないヤギ、タンゴだけは常に他人事のため、薬の塗布が始まると猛然とダッシュしてきて、においをかがせろとばかりに他のヤギと人の間に割り込んできます。おかげでみんな少しずつ毛が生えてきたので、タンゴの「お楽しみタイム」ももうすぐ終わりそうです。

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